第28章 『再・分解』 3
エリシアを離してやると、いつだか僕にせがんだ僕の錬成陣が書いてある既にボロボロになっている紙を何処からか持ってきた。
「はいこれ!お仕事で使うんでしょ?」
「え、あ、うん。ありがとう。」
こんな物、まだ大事に持ってたんだね。
僕はエリシアに、交換。と言って真新しい錬成陣の書いた紙を数枚渡した。
「行ってきます。」
見送りは危ないから玄関でいい。と言って僕は半ば逃げるように家を出た。
……………。
エリシアから受け取ったボロボロの錬成陣。
僕はそれを家族の写真が入っている手帳に挟み、ズボンの後ろポケットに押し込んだ。
次に足を向けたのは父さんの病院。
戦闘で怪我人が出ているのかと思ったが、特に病院が賑わっているわけではなさそうだった。
ロイ達は上手くやっているんだな。
「あの、それが…。」
「それが?」
部屋に父さんの姿が無かったので、近くのナースステーションに聞きに行った。
すると看護婦たちは、一様に驚いたような気まずそうな視線を向けてくる。
「先ほど軍の方がいらして、揉めたみたいで。」
「揉めた?」
「連行?って言ったらいいのかしら、連れて行かれてしまったんです。」
「はい?」
父さんが今更軍ともめ事を起こすなんて…。
看護婦さんはさらに言葉を続ける。
「それと、お兄さまは亡くなられたって聞いたんですけど…?」
「え?あ、僕?」
「はい…。」
あぁ、そうか。軍では死んでいることになっているんだった。
けど、家族には伝えるなってアームストロング少将が手を回してくれたはずなんだけどな。
「たぶん、デマですよそれ。」
「で、ですよね!」
目の前にいるのが幽霊じゃなくて安心したように全員がホッとため息をつく。
それから、父さんを担当していた看護婦さんが近寄ってきて、耳元でぽつりと漏らしてくれた。
「軍の人、なんだかものすごい剣幕でしたよ。なんか、お前は餌だ!とか人柱!とか言ってました。」
と、そうこうしているといやに廊下が騒がしくなった。
「ビーネ・ヒューズが現れたそうだな!」
「え?」
「いたぞ!捕えろ!」
病院内の誰かが情報を流したんだろう。