第28章 『再・分解』 3
あぁ、カナマを離れる前にアルに声をかけてくれば良かった。
大丈夫かなアルフォンス。
セントラルの街の中を、一般人を装って歩く。
何処からか聞こえる発砲の音や爆発音。街の人たちはそそくさと家路や目的地を目指している。
久しぶりの自分の家、不穏な空気を感じてか、きちんと玄関には鍵が掛かっていた。
「母さん、ビーネだよ。ただいま!」
慌しく鍵を開ける音が聞こえて、中から今にも泣きそうな顔をした母さんが飛び出してきた。
「ビーネ!」
「うわっ、母さん!」
ぎゅう!と僕を思い切り抱きしめてくれた。
小さな声で、無事でよかった、良かった。と何度も繰り返す。
「兄ちゃん?」
「エリシア。ただいま。」
「おかえり!」
前に会った時より、しっかりと発音できるようになっている。
ようやく母さんが離れ、三人で家の中に入る。
もちろん玄関にはしっかりと鍵をかけて。
「ビーネ。一体何が起きているの?」
「うーん。この国を消そうとしている悪い奴らと戦ってる所かな。」
「…貴方も行くの?」
父さんに次いで僕まであんなことにならないか心配でならないんだろう。
ごめんね、母さん。
「うん。仲間が戦ってるんだ。僕も、家族を守るために戦うよ。」
「兄ちゃん!今日ね、にっしょくなんだよ!」
「あぁ、うん。そうだね。大事な日だ。」
エリシアの手には日食の事を書いた絵が握られている。
まぁ、太陽が何かにもぐもぐと食べられている絵だが・・・。
「兄ちゃんも一緒ににっしょく見よう?」
「ごめんね、エリシア。兄ちゃんお仕事なんだ。」
「えー!けちー!」
ぐいぐい。と僕の上着を力いっぱい引っ張るエリシア。
服が伸びても困るので、とりあえず膝の上に抱き上げた。
「兄ちゃんこれから。エリシアがたくさん遊んでいられるようにお仕事してくるんだ。」
「ほんとに?」
「ホントだよ。」
「ビーネ……。」
母さんは、僕の微妙な言い回しに眉をひそめる。
「よぅし。じゃぁ兄ちゃん行ってくる。」
「うん!お仕事がんばってね!」
ギュッと一度エリシアを抱きしめ、彼女の柔らかさや温かさを脳に焼き付ける。