第26章 『再・分解』
ヴァンさんのノーモーション錬金術。
アルフォンスをそのままにセリムごと周りの土を分解し、その場に土のドームを作り上げ、閉じ込めてしまった。
「アル。」
「どういう事だ!おいホーエンハイム!アルが巻き添えになってんじゃねーか!」
ポカンとドームを見上げる僕と、吠えるエドワード。
「アルの提案だ。」
「だからって何で俺に相談なく…」
「『兄さんに言ったら絶対反対される』ってさ……アルなりに全員が今生き残る術を考えた結果だ。」
目の前の敵は倒せる見込みが無く、目前に控えた作戦を失敗させる訳にはいかない。アルは賢い。
「さぁ、まずこの火を消すぞ。アルが蒸し焼きになってしまう。」
暗い顔のヴァンさん。
エドワードの怒りももっともだが、それ以上にヴァンさんだって迷ったはずだ。
大切な息子だから。
火を消すのに一晩掛かった。
分けてもらった朝飯を、エドと一緒に食べている時の事だ。
「で。」
で。とだけ言って固まったエドワード。
当然視線はそちらに向く。
「で。」
「で?」
「おまえ、だれ?」
初めて出会った頃の疑いの視線を向けて来るような顔で僕を睨みつけてくるエド。
「ビーネ・ヒューズ。」
「一発殴らせろ。」
「ご勘弁を。」
死んだ事とか今まで何してたとか、色々聞かれると思ったが、エドワードは黙ってまたパンにかじりついただけだった。
「炭鉱で行方不明になったって聞いたけど。」
「あぁ、なんとかおっさんたちのおかげで生き延びた。」
「心配したよ。」
「ばーか。」
一度も目を合わせてくれないエドワード。
本当は僕の事偽物だとでも思っているのだろうか?
「俺がどれだけ……」
そう言ってまた口を閉じてしまう。
横目で、ちらりと存在を確認するかのように視線を向けてくる。
「心配したと思ってんだ。」
「ごめん。」
「アルもお前も。相談ぐらいしろよな。」
「ごめん。」
拗ねる子供のようにまたそっぽを向く。
「エドワード。」
「んだよ。」
呼ばれた自分の名前にこちらを振り返る。
「僕も君も生きてて良かった。」
・・・