第26章 『再・分解』
「へっくしゅん!」
ぼーっとしているこの時間がもったいないとも感じるし、ずっと続けばいいとも思う。
「そろそろもどる……か?停電?」
立ち上がって、お尻の砂を払いながら、スラムへ戻る。
「どうしたんですか?停電?」
「あぁ、突然ここら全体だ。」
「おい!山の方で大きな音がするぞ。」
「山火事よ!」
慌てる人たちが口々にこぼす情報は、どれもきな臭かった。
軍か、ホムンクルスか。
「みなさん!慌てないで、とにかく明かりを戻して!」
「セル!一緒に山、見に行くぞ!」
「僕一人で行きます!すぐ戻ってきますから、男たちは街に明かりを。」
ヤバそうな所へ一般人を連れていく訳にはいかない。
とにかく急げ。
ここしばらく、山の中を走り回っていたおかげか、以前より足腰が強くなった気がする。全速力で火の手の上がっている方へ向かえば、アルフォンスとヴァンさんそれからおじさん。
「ヴァンさん!アル!」
「セル!」
一体何が?と聞くまでもなかった。
すぐに聞こえてきた物凄い轟音。ヴァンさんが、エドたちがホムンクルスと戦闘中だと教えてくれた。
「行くなら気をつけろ。」
「はい。」
おじさんが苦い顔をしてそう言った。
まずは音のした方へ。
倒れている丸太を踏みつけ、前方に飛び出すと、こちらに逃げてくるエドワードとリン。
「エドワード!?」
「ばっかやろ逃げろ!」
彼らの後ろには口の裂けた大きな影。
なんだこれは、と考えている暇はなかった。