第26章 『再・分解』
戦力の分配と僕の今の状況を鑑みた結果。
アルフォンスやウィンリィさんの計画について行くと、軍関係者との距離が近くなってしまう為、ヴァンさんと行動を共にする事に決めた。
『約束の日』までの数ヶ月間、彼らの手伝いをする訳にもいかず、隠密に北方軍やロイ達を手助けする事も出来ず、ただただ息を潜めてヴァンさんと行動を共にした。
「君、随分真面目だねぇ。」
背中にスラムの子供を乗せて遊んでやりながら、腕立て伏せ。
その姿勢のまま声の聞こえた方を振り返る。
「これくらい、しないと、鈍ります!」
「天才は違うね。」
「んなこと、ないです!」
中央にほど近いスラム。カナマ。
スラムから少し離れたこの場所では、遠くにはセントラルの町並みが見える。
中央で腕を複雑骨折する怪我の後からずっと、家族には連絡を取っていない。
日々の日課の筋トレを終えて、セントラルの街を眺めながら想う。
「みんな、何してるのかな。」
母さんはきっとすごく心配しているだろうし、エリシアも寂しがっているかもしれない。父さんの事だって気になる。父さんの腕と足を、オートメイルにできるかどうかも考えている。
セントラルにいるロイやリザさん、アームストロング姉弟。飛ばされてしまった、ブレダさんやフュリーさん。北にいるファルマンさん。
僕には『約束の日』にどうなるのか見当もつかない。けれど、絶対に国土錬成陣は発動させる訳にはいかない。
ヒヤリ。
と、ポケットに無造作に突っ込んである銀時計に指が触れた。
人造人間達が作り上げたアメストリスという国。
彼らが引き起こしていた戦争。
戦争で傷ついた多くの人、僕の師匠である中将や、大切な人たち。ウィンリィさんの両親、スカー。
色んな人の苦しみ。
ぐ。と銀時計を握ればいろんな感情が湧きあがってくる。
チャリリ。
引っ張りだしてソイツを睨みつける。