第25章 『再・理解』 4
ヴァンさんが少し緊張した面持ちで口を開いて、数日前僕に話してくれた事と同じ事をアルフォンスに話す。
彼の特殊な生い立ちや、一体何があったのかなどなど。
僕は聞くのは二度目だが、まだおとぎ話を聞いているような気持ちになる。
「聞いてる?」
「んはぁ!!」
「理解した?」
「えーと、奴隷が父さんで賢者の石?」
うわー、ざっくりー。
「うん、そう。」
「ああ、そう。」
なんだかんだ言っても、二人は親子なんだろうな。
ヴァンさんは時々、エドワードにも似ているしアルフォンスに似ている時もある。
「さて。僕は仕事の続きをしてくるよ。二人はどうぞゆっくり。」
アルも一緒に腰を浮かしそうになったが、僕が首を振って、ちゃんと話をしろ。と念を押した。
しばらく作業に熱中していると、アルフォンスが鎧をガチャガチャ言わせながら走ってきた。
「ビーネ!相談があるんだ!」
「ばかやろう!セルだ!セルヴァインだ!」
「あっ!ご、ごめんセル。」
一緒に作業をしていた男たちが一瞬不思議な視線を向けてきたが、笑ってごまかした。
「それで。相談事はここでもできる?」
「えっとー……。」
なんどもなんども休憩を取るのも申し訳ないと思ったが、いってこい!と男たちは快く送り出してくれた。
ちょうど、入れ替わりでヴァンさんが手伝いに入ったので、それもあってだろう。
「で?」
「うん、あのね。師匠にその日の事を伝えようと思うんだ。それで、北のマイルズさんに伝えてもらう。」
イズミさん?どうして突然二人の師匠の名前が出てくるのか。
「父さんが師匠と知り合いで、師匠も目を付けられているみたいなんだ。」
ふむ。
イズミさんも真理を見た人だ。軍が目を付けるのも当然。
アルが言うには生粋のブリッグズ兵の人は信じても大丈夫らしいので、その『約束の日』の事を北に伝え動いてもらおうというのだ。
善は急げと、北に行ったことがあるというイズミさんたちと連絡が取れそうな、カーティス精肉店へ連絡を取った。
「よし。これで師匠に伝わる。」
「僕の予想では、最終的な終着点はロイ・マスタングになる。」
「…年を越して」
「来春。」
年を越して来春。
北も東も、動く。
・・・