第14章 Ephemeral(黄瀬涼太)
「じゃ、行ってきまーす」
「行ってらっしゃい、気をつけてね……っ!?」
玄関で振り返った涼太が、突然私を胸の中に閉じ込めた。
「涼……太?」
覗き込んで来た彼は、催促するように人差し指で私の唇をノックする。
え、え、いつも、行ってらっしゃいのキスは唇が軽く触れるだけのものなのに。
突然の色気に、唇を薄く開くのが精一杯。
侵入してきた彼の舌に翻弄されて、立っているのがやっとだ。
「あー、行きたくねー」
最後にぎゅっと抱き締められて、熱は離れていった。
「き、気をつけてね」
やっとそうとだけ言えて、名残惜しそうな彼が出て行った途端、その場に座り込んでしまった。
午後は怒涛だ。
甘いキスの余韻に浸る暇もなく、子どもをお迎えに行ってその足で公園に寄り、お友達と散々遊んでから、日が落ちる前に帰宅。
そこからはタイムアタックのごとく、お風呂、ご飯、遊びの時間をこなしていく。
寝る前の、いつものおままごとをやっているタイミングで涼太は帰宅した。
涼太は、さっとお風呂に入って、パパの登場に大興奮の子ども達をささっと寝室へと連れて行ってしまった。
大きな音を立てないように片付けを済ませていると、十数分で涼太は戻ってきた。
「即寝だったっスわ」
「早かったね、公園で走り回ったから疲れてたかな」
「あぶねー、オレまで寝かしつけられるとこだった」
「わかる、暗いところで横になると寝ちゃうよね」
分かってるのに毎度毎度、それで寝落ちてしまう……。
「んじゃ、ちゃちゃっとやっちゃおうかな〜」
そう言うと、大きな紙袋をリビングに持って来た。
中にはたくさんの……風船?