第14章 Ephemeral(黄瀬涼太)
起きたらすぐに食べられるよう、冷蔵庫にあった野菜の中から消化の良いものをいくつかピックアップして、生姜も多めに入れて、野菜スープを作っておいた。
午前中は仕事のメール返信、スケジュール調整とweb打ち合わせをしているうちにあっという間に過ぎてしまった。
正午を過ぎても涼太は起きて来ない。
こんなにも長く寝ているのは本当に珍しい。
今日は14時から打ち合わせがあったはずだから、そろそろ起こさなきゃかな……お昼ご飯の用意を済ませてエプロンを外そうとした瞬間、後ろに突然気配が現れた。
「わっ、お、おはよう」
「おはよ。ごめんね、全然起きられなかったっスわ〜」
前髪の寝癖がぴょこんと跳ねて、お腹を掻きながら大きなあくびひとつ。子どもみたいだ。
「疲れてたんだね。ご飯、食べられそう?」
「うん、ありがと。うまそ〜」
鍋をひょいと覗いてから、専用ポットに作ってあった白湯をマグカップに注いでひとくち。
無言で私をぎゅっと抱擁して、洗面所へと消えた。
涼太が顔を洗っている間に、食卓の準備を進めておこう。
「食べられそうならバゲットでも一緒に食べる? これから打ち合わせだよね」
「もらおっかな、腹減った」
いつもの雰囲気でそう言ったけど、顔色はあまり良くない。
季節の変わり目で体調を崩しやすいこの時期、彼も絶好調とはいかないみたい。
いつも飲むコーヒーも、ミルクを多めにした。
「今日、そんな遅くならずに帰って来れるはず」
「ほんと? ご飯作っておくね」
「……めっちゃ嬉しそうで可愛いんスけど」
「え!? 顔に出てた!?」
涼太が早く帰って来れるのは本当に何週間ぶりだろうというくらいで、つい感情が前面に出すぎてしまった。
「うん、なんか元気出たっスわ」
出かける前にこうやって少しでも会話が出来るのが嬉しい。
元気をもらってるのは、いつも私の方だ。