第121章 異国のマナーは一朝一夕では身につかない。
目を見開く土方。涙が零れたのは無意識だったのか、葵咲は土方からの視線と涙に気付き、慌てて自らの涙をぬぐう。
葵咲「あっ。や、ごめ、違うよ!景色が綺麗すぎて感動しちゃって!」
取り繕うように笑顔を作る葵咲だが、土方にはそれが無理をしているように見えた。土方は少し考えるように黙り込んだ後、ゆっくりと口を開いた。
土方「・・・・なぁ。この間言ってた、俺と付き合えねぇ理由って…何だ?」
葵咲「え?」
土方「あっ、いや。」
先程の質問は土方から無意識に零れた言葉。心の底でずっと引っ掛かっていた疑問。葵咲の涙に関係しているのだと思った。だがそれを素直には伝える事が出来ず。いや、それどころか心の中では認める事すら出来ず、頭を振って心の中で叫ぶ。
(土方:違う!これは断じて違うゥゥゥ!!総悟がどうこう言ってた事は関係ねぇ!ましてや気になるとかそんなんじゃねェェェェェ!!これは…そう、プライドの話だ。あくまで!男の面子として!!)
そんな風に自分へと言い聞かせる。だが“面子”などとも言えるはずがない。土方は冷静さを取り戻し、あくまで葵咲を気遣ってる風に質問を投げ掛けた。
土方「何か事情でもあるんじゃねぇのか?」
葵咲「っ!…べ、別に。土方さんには関係ない事だから。私個人の問題。」
土方「!」
突如のツンツン対応。プイッとそっぽを向いてしまう葵咲に、土方も少しカチンと来る。土方は売り言葉に買い言葉で眉根を寄せて口を尖らせた。
土方「お前、何か隠してんだろ。」
葵咲「何もないよ。」
土方「じゃあ なんで目ェ反らすんだよ。」
葵咲「っ!」
葵咲が嘘が苦手だという事。嘘を吐く時や隠し事をする時は目を合わせられないというクセを、土方が知っている事を葵咲は知っている。己の心の底を見透かされてしまいそうだと思った葵咲は、慌てて別の言葉に切り替えた。
葵咲「そういう土方さんは?」
土方「え?」
突然話を振られた事で、ぽかんとする土方。まさかここで自分に話が向けられるとは思ってもみなかった。土方が目を瞬かせている中、葵咲は静かに続ける。
葵咲「土方さんが私と付き合いたい理由はなんですか?そうまでして私にこだわる理由は?」
土方「は?」