第121章 異国のマナーは一朝一夕では身につかない。
一方、ライダー星へと到着した葵咲を含む乗客達は、船から降りて湖の畔に集まる。
「それでは順番にボートへご乗船下さい。」
乗務員の案内で、クルーズ客は順番に船着き場からボートへと乗船して行った。
順番が回って来た葵咲と土方もボートに乗る。葵咲が舟を漕ごうとするも、土方がそれを制し、自らが舟を漕ぐと伝える。上司に気を遣って始めは委縮する葵咲だったが、ふと近藤との買い物デートを思い出し(雪月花 第48~49訓参照)、男としての立場を護る為にも、その行為に甘える事にした。
ボートを漕ぎ出して数分後。
水面から空に向けて、無数のランタンが浮かび上がる。まるでおとぎ話の世界にいるようなロマンチックな情景に、葵咲は目を輝かせた。
葵咲「凄い…!綺麗~…!!」
空を見上げて感激する葵咲。そんな彼女の横顔を見て土方も自然と顔が綻びる。こうして見ると普通の女の子だ。土方は ふとそう思った。
そして葵咲は土方へと視線を合わせて思ったままの感想をぶつける。
葵咲「ラプンツェルの世界にいるみたいだね!」
土方「いや、それまんますぎんだろ。」
葵咲「じゃあ“ランタンフェスティバル”?」
土方「TDSのラプンツェルのアトラクションじゃねーか!結局一緒だろーが!!」
情景が思い浮かびにくい人は、塔の上のラプンツェル、物語中盤~終盤のラプンツェルとフリンがランタン祭りにて、ボートから灯りを飛ばした景色を思い浮かべてもらえれば。そのイメージそのものなのだが、それをそのまま口にする葵咲に土方は苦言を呈した。
暫くの間、葵咲は綺麗な情景を目に焼き付けるかのように、じっと夜空を見上げていた。土方は夜空を見たり、葵咲の横顔を眺めたり。ゆっくりと船を漕ぎながら近くの風景なども目に入れていた。ゆらゆらと波に揺られながらポツリと葵咲が呟く。
葵咲「・・・・このまま時間(とき)が止まれば良いのにな。・・・・今がずっと…続けば良いのに・・・・。」
何気ない一言。だが、どこか重みのあるその言葉に、思わず土方は葵咲の方へと目を向ける。
その時、葵咲の瞳から一筋の涙が零れ落ちた。
土方「!」