第121章 異国のマナーは一朝一夕では身につかない。
葵咲がぼーっとしていると、土方が目を瞑って言葉を放った。
土方「侍は箸だ。それに、んな難しい顔してたら上手い飯も不味くなんだろーが。」
ブチュウウウ…。
そう言って土方は先程カメリエーレから受け取ったマヨネーズをふんだんに料理に掛ける。それを目の当たりにした葵咲は率直な感想を吐露した。
葵咲「いや、それ美味しいご飯も台無し…。」
葵咲の苦言をも気にせず堂々と更にマヨネーズをかけまくる土方。そんな土方を見て、葵咲は緊張の糸が途切れたかのように吹き出した。
葵咲「プッ。クククク。」
土方「あっ、てめ!何笑ってやがんだ!」
別に土方は葵咲を笑わせる為にマヨネーズを掛けたわけではない。至って真剣。それを笑われた事に土方は不機嫌な顔を浮かべている。葵咲は涙目になる目を擦りながら土方へと視線を合わせた。
葵咲「いや、ごめんごめん。…あっはははは。」
堰を切ったように笑い続ける葵咲。どうやらツボにハマってしまったらしい。最初は自らが笑われる事に不服そうだった土方も、葵咲の笑い顔を見てフッと笑みを漏らす。
土方「…ったく。やっと笑ったな。」
葵咲「え?」
土方「飯は笑って食うから美味いんだろうが。」
葵咲「!」
土方のその発言に葵咲は目を丸くする。だが土方の意見に納得出来るものがある。食事は何を食べるかではなく、“誰と食べるか”。それが何より重要だ。葵咲は優しい表情へと変えて頷いた。
葵咲「うん、そうだね。」
“私、やっぱりこの人の事が好きだ。”
二人はマナーなどそっちのけで箸を使い、笑顔で食事を楽しむ。そして船はライダー星へと到着した。