第121章 異国のマナーは一朝一夕では身につかない。
前菜に手を付けられずに傍観していると、早くも次の料理が運ばれてきた。
「続きまして、同じく前菜。宇宙の闇を演出した『ダークネス・スター・トゥマットゥのアンティパスト』です。」
(葵咲:さっき以上に謎の料理出て来たァァァァァ!!これ食材!?料理なの!?)
最早これは料理と言えるのか。皿の上でキラキラと星のような輝きを散りばめた、黒く光る空間が浮いている。それはまさしくブラックホール。目を奪われる程綺麗ではあるが、切るのか掬うのか、それすら分からない。この料理をどのように対処すれば良いのか分からず、葵咲は近くの席をチラ見する。すると隣に座っていた客は並べられたナイフとフォークを外側から使う事もなく、理解し兼ねる順序で多数駆使して料理と闘っていた。
(葵咲:テーブルマナーってナイフとフォーク外側から使うんじゃないの!?外・外・内…真ん中取って外!?何のフェイント!?どういう事ォォォォォ!?)
人知の域を超えている。理解すらままならない。このディナークルーズに来た事がそもそもの失敗だったとさえ思えた。葵咲は料理に手を付ける事が出来ずに俯いてしまう。
葵咲「・・・・・。」
土方「・・・・すいませーん。」
暫く葵咲の様子を眺めていた土方だったが、ここで手を挙げてカメリエーレを呼び寄せる。
土方「箸二膳貰えますか。」
「えっ。ですが…。」
土方「あと、マヨネーズもボトルで。」
「は、はぁ。只今…。」
カメリエーレは土方に言われるがまま、箸とマヨネーズを取りに行く。そしてそれを持ってきて土方へと手渡した。受け取った土方は箸を一善、葵咲の前へと差し出す。
土方「ん。」
葵咲「え?」
目の前に差し出された箸を思わず受け取る葵咲。受け取ったものの、葵咲はきょとんとした表情で目を瞬かせている。