第121章 異国のマナーは一朝一夕では身につかない。
心を落ち着かせようと深呼吸をしてみるも鼓動の高まりは治まらない。そんな葵咲の心情などつゆ知らず。先程のカメリエーレが食事に必要な器具を二人の前に並べ始めた。葵咲が想像していたのはフォークとナイフ、それぞれ三~四本ずつ。スープがあるならスプーンもあるかもしれない、程度。だがカメリエーレは十本以上の器具をズラズラと並べたのである。
葵咲「・・・・・。」
(葵咲:なんかやたらナイフとフォーク多いんだけどォォォォォ!!)
しかもそれを並べるだけでは飽き足らず。テーブル中央に定食屋の箸置きのように、筒に数本の器具を入れた形でドンと置いた。
(葵咲:多すぎて並べ切れてないよ!これ使う順番いつ!?しかもこの器具は何!ナイフでもフォークでもスプーンでもないやつあるよ!どうやって使うの!!)
見た事のない料理器具も入っていた。手裏剣のような物や、鉈のような物も。葵咲はその場で固まるしかなかった。だが葵咲が固まろうが何をしようが、料理は問答無用で運ばれてくる。
「まずは前菜から、地球と火星の間をイメージした『オリエント・レッドキュゥイのトウッツィキーノ』です。」
(葵咲:なんか見た事ない野菜出て来たァァァァァ!!オリエントレッドキュゥイって何!てかなんで浮いてんの!?最早芸術ゥゥゥゥゥ!!どうやって食べんの!?)
葵咲は目を疑う事態に陥る。見た事のない野菜が盛りつけられているだけではない。味が分からないどころか、そもそもその食べ方が分からない。料理名を表すかの如く皿の上で野菜が浮いている。どのようにナイフを通せば良いのやら。葵咲は顔面蒼白である。