第119章 一世一代の大勝負には全額を賭けろ。
総悟「曲がりなりにも葵咲は土方さんの部下。本音を言えるとでも?」
土方「!」
総悟「嫌だったとして、それを素直には言えないんじゃねぇですかぃ?」
土方「!?」
ここまで言われて初めて総悟が言わんとする意味を理解する土方。
確かにそうだ。葵咲は土方の部下。立場は土方より下である。社会人として、上司からの誘いは断りづらいものだ。普段の飲みの誘い等でもそう。無下に断れば関係に亀裂が入り兼ねない。学生ではないのだ。嫌です、の一言では済ませられず、大半の人間は断り文句一つにも気を遣う。今後の仕事の事も考えると、簡単には断れないのが当然。その指摘に土方は言葉を失う。
そして総悟は更に続ける。
総悟「しかもあの性格だ。これからも穏便に仕事を進めようとするなら、むしろそういう発言に至る方が自然だと思いやすがねぇ。」
土方「!!」
土方の頬に一筋の汗がつたう。それを見たのか、総悟は会心の一撃を繰り出すかの如く、人差し指を土方へと向けて叫んだ。
総悟「つまり!アンタは実質フラれてるって事でさァ!!」
土方「っ!!!」
その言葉の刃は土方のど真ん中を射抜く。そしてその時、先日の慰安旅行の事が土方の脳裏に浮かんだ。葵咲の部屋で想いが通じ合った時の事だ。
(土方:あの時…確かに俺が強引に…いやいや、あれは違ぇよ。嫌がってたわけじゃ…。)
徐々に血の気が引いていく土方。よくよく考えてみれば自分が半ば無理矢理押し倒した。しかもその時葵咲からストップを掛けられた事も思い出す。…実は嫌だったのだろうか。もしくはアレで引いてしまったのだろうか…。土方は顔面蒼白で言葉を失う。
土方「・・・・・。」
黙り込む土方を見て総悟が口をつく。
総悟「何か心当たりでもあるんですかぃ?」
土方「な!んなわけねーだろ!」
我に返って慌てて言葉を返す土方。そんな土方へ、総悟は彼を追い詰めるような言葉を送る。
総悟「違うってんなら証拠を見せて下せぇ。」
土方「あぁ?」
総悟「葵咲がホントにアンタの事を好きだっていう証拠でさぁ。付き合えない本当の理由を探って来て下せぇ。」
土方「なっ!」
思わず咥えていた煙草を口から零す土方。動揺する土方を見て、総悟はニヤリと笑みを浮かべて宣戦布告を行なう。