第119章 一世一代の大勝負には全額を賭けろ。
場所を移して人目に付きにくい屯所の庭。近藤と山崎は土方へと詰め寄る。二人の恋路の現状について、説明を求めた。物凄い剣幕で詰め寄る二人に、鉄之助は内心ヒヤヒヤ。土方が爆発してしまうのではないだろうかと。だがそんな心配をよそに、土方は至って冷静に。始めは近藤達からの質問をいなしていた土方だが、引き下がらない二人にとうとう根負けして白状した。
近藤・山崎「はァァァァァ!?付き合ってないィィィィィ!?」
土方「バッ、ちょ!声がデケーよ!!」
声を揃えて大声を上げる二人に、土方は周りをキョロキョロと見回しながら唇に人差し指をあてがう。驚きの返答に近藤は周りの目など一切気にせず、目を見開いて言葉を紡ぐ。
近藤「んじゃ何か?『両想だね、嬉しいね、有難う、これからも宜しくね』ってか!小学生か!!」
山崎「プラトニック貫くにも程があるでしょ!!」
土方から聞かされた回答は、『葵咲とは付き合ってない。』の一言だけ。その回答に至る経緯は聞いていない。故に理解しがたいものがあった。近藤達は土方を女湯へと誘導し、そこで二人が結ばれたものだと思い込んでいる。そんな境遇で何もなしに終わるとは思えなかったのだ。だがそれに対して土方は事細かに説明することなく一喝する。
土方「そういうんじゃねーよ!!職場恋愛なんざ隊士どもに示しがつかねぇ。士道不覚悟で切腹もんだろうが。」
土方は煙草に火を点け、眉根を寄せて煙を吐き出す。その様子を近藤はじっと見据える。捉え方によっては言葉を濁しているようにしか見えない言動。長い付き合いの近藤だ。土方の内なる何かを読んだように、質問を投げ掛けた。
近藤「それ、お前から言い出したのか?」
土方「えっ!?いや…。」
ギクリ。
近藤の鋭い質問に背中を強張らせる土方。その様子を見た山崎は、何かを察したように呆れ眼で口を開いた。