第118章 幸せな時間明けの日常は夢オチを疑う。
だが一夜明けての彼女は今までと一切変わりない。案外手慣れているのか?釣った魚には餌をあげないタイプなのか?様々な憶測が飛び交う。
だがどれもしっくりこない。そんなタイプには思えない。となると昨夜の事は丸々夢という事なのか…そんな考えに至ったのである。
そんな土方の推察をよそに、葵咲は普段どおりの態度で質問を投げ掛ける。
葵咲「土方さんは帰り支度終わった?」
土方「えっ?あ、ああ。まぁ俺ァ元々荷物もそんなねぇしな。」
葵咲「そっか。」
考え事をしていた為に質問の回答に一呼吸遅れてしまう。割と挙動不審気味な動きをしているのだが、そんな土方に葵咲は気付いていない様子。葵咲は顔を上げ、少し頬を赤らめてもじもじしながら上目遣いで言葉を押し出した。
葵咲「じゃああの…朝食の後、ちょっとだけ時間、もらえない?」
土方「!」
しおらしいその態度に土方の胸はドキンと脈打つ。そんな二人のやりとりを遠からず近からずの距離にて、近藤と山崎は覗き見ていた。
近藤・山崎「・・・・・。」
今まで見た事のないような二人の雰囲気に、近藤達はニヤニヤしてしまう。そして山崎が呟くように言った。
山崎「あの二人、どうやら上手くいったみたいですね。」
近藤「だな。」
山崎「朝食の後二人で…」
旅行の想い出作りに精を出すのだろうか。あ、勿論いやらしい意味ではなく。二人はどんな風に一緒の時を過ごすのだろうかと、想像しただけでニヤけてしまう。
そんな山崎に対して近藤は同様にニヤけるのではなく、フッと笑みを零して目を瞑る。そして腕を組み、土方達には背を向けて歩き出した。
近藤「後は若い二人に任せよう。俺達外野は見守るしかあるめぇよ。」
山崎「そうですね。」
山崎もまた、土方達の背に微笑を送った後、近藤に続いて歩を進めた。