第15章 天下人信長
「」
「……は、はいっ」
ただ名前を呼ばれただけなのに、私は緊張をして声が上擦ってしまう。
だってついさっきまでは可愛いなんて気軽に思っていたのに、今はとてもじゃないけどそんな風には思えないよ。
これでもかっていうくらいに男の色気を身に纏わせているんだもん。
「貴様、さっき俺の事をなんと言った?」
「あ、あの……その……」
危険、危険、危険!!
此処にいちゃ危険!!
私の本能が騒ぎ立てる。
信長様の怒りをかっただけなら危険じゃない。
恐ろしいのはその怒りの報復。それがとてつもなく怖いし危険。
「あの……そろそろ……お暇しますね?……夜も遅いし……寝ないと……」
絞り出すように言葉を発し、目で信長様の動きを伺いつつ椅子から立ち上がる。
早くこの部屋から出ないと、とんでもない事になる。額から汗が落ちるけど拭う余裕も今の私にはない。
「誰の許しを得て立っている?」
(私が許しました!自分の身を守るために)
「ほう……自ら俺の元に飛び込んでくるとは……」
「えぇ……?!」
なに?!
何がどうなったの?!
信長様の動きに素早く対応出来るように視線は信長様に固定していたはずなのに……
なぜ私は壁を背に閉じ込められているの?!
(壁ドン……?これって壁ドンなの?)
「……」
「ぅ……!」
骨張った指が私のあごを持ち上げている──
(あごくいもプラスされてるよ……)