第12章 目を見て喋ってください
手紙を読み終えた家康さんは苦い顔をすると右手で手紙を握りつぶした。
更に怒ってる?
様子を伺っていると
「……乗って」
「え?」
「ほら、早く」
「……大丈夫ですよ。ちゃんとお城まで帰れますから」
馬はやだ。
この時代に来てすぐに政宗に馬に乗せられた時の恐怖が蘇ってくる。
馬は怖い。苦手
(トラウマになってるんだから)
「本当に大丈夫ですから」
「お城じゃない。俺の御殿に行くよ」
家康さんの御殿?
なんで?
聞こうとしたけど体を引っ張っられて馬の背中に乗せられてしまった
(うっ……怖いし、高いしっ!)
馬の背中にへばりつくようにしがみついていると、私の後ろに家康さんが跨がった。
「ちゃんと乗ってくれる?」
「……無理です……!動けません」
「はぁー……まったく」
呆れられてもいいよ。
だって、怖いんだもん。ちょっとでも動いたらバランスを崩しそう。
「……面倒な女。行くよ……」
「うわっ……!」
上下運動が始まった……!
また、あの恐怖を体験するのかと目をぎゅっと瞑って全身に力をいれていると
「……あれ?」
馬は走るわけでもなくゆっくりとリズムを取るかのように歩いている。
「町中で馬を走らせるわけないでしょ」
……左様ですか。