第12章 目を見て喋ってください
この道をまっすぐに行って、つきあたりを右に曲がって左側に家康さんの御殿があって……?
「ん?……なんでないのかな?」
あれ?
間違えた?
まさか……此処が家康さんの御殿じゃないよね?
いかにも住んでいませんよっていうくらい手入れのされていない家。
でも……なんだか気になる。
なんで周りは雑草が生えているのに門だけ新しいんだろう?
それに風に乗って何だか匂いがする。
この匂いは……?
嗅いだことのある匂い。
「うーん……どこだっけ?」
目を瞑って匂いの正体を探していると
「……こんな所で何やってんの?」
聞き覚えのある声に目を開けると馬に乗った家康さんがいた。
「こんにちは……家康さん」
「こんにちは……っていう時間でもないよね」
「あ……確かに」
西の空には綺麗な夕焼けが広がっていた。
「じゃあ、こんばんは」
「……そういう問題じゃないんだけど」
「え……?何か言いました?」
「別に……それよりも何で此処に?」
「家康さんの御殿に行こうと思って」
「俺の……?」
家康さん、今日も機嫌が悪そう。
「三成くんに頼まれてこれを届けに……」
懐から三成くんから預かった手紙を家康さんに渡すとあからさまにイヤな顔をして手紙に目を落とし始めた。
家康さんって睫毛が長いな
それにくせっ毛でちょっとふわっとしてるし
(触ってみたくなる)