第10章 秀吉さんの1番
「心細かったろ」
「……うん」
あの時の事を思いだすとまた、涙が溢れそうになる。
秀吉さんが見えなくなって、どうしていいのかわからなくて。
「もう泣くな……」
私の目の前にはちょっと眉毛を下げて、困ったように笑う秀吉さん。
その笑みは今までに見た事がないくらいに優しくて、胸がどきどきとしてきちゃう。
「な……?」
「っ……!」
不意に頭をぽんぽんと撫でられて胸がときめいてしまいそうになる。
息苦しいよ……
うまく呼吸が出来なくなりそう。
いつも眉間にしわを寄せているような顔しか見たことがなかったから……その優しい笑顔は反則だよ。
「(ほんのりと頬を染めて照れてるなんて可愛いよな)」
気のせいかもしれないけど、秀吉さんから熱い視線が注がれているような気がしてしまうんだけど……
気のせい……だよね?
熱い視線と無言に耐えられなくて何か喋らなくっちゃと頭の中で引き出しを開けて放っていくけど……何を話たらいいの?!
「……よし!決めた!」
「へ……?」
沈黙を先に破ったのは秀吉さんだった。
「お前は危なっかしい」
危なっかしいって……
(ちょっと迷子になっただけでしょ?)
「だから俺が守る」
「それって……」
真剣な眼差しの奥は熱くゆらめいていて、普通だったら「この人は私の事を好きだから守ってくれるのね」
と思うんだろうけど。
案外バカじゃない私にはわかっている。
秀吉さんの言っている意味は
「信長様のお気に入りだから___ですよね?」
「……?信長様?」
「あら……?」
鳩が豆鉄砲をくらったかのようにキョトンとする秀吉さん。
……なんで?