第10章 秀吉さんの1番
「まったく……一体どうしてそうなるんだ?」
「……すみません、ごめんなさい」
深々と頭を下げ、ひたすら秀吉さんの小言を受け入れる体制を取る私
(つまり土下座中)
あれから馬に乗った秀吉さんが私を見つけてくれて無事に安土城に戻ってこれた。
安土城に着くまで無言だった秀吉さん。
絶対に怒っているよね
秀吉さんの背中が怒っているような気がして、私もずっと黙ったままだったけど心の中では「ごめんなさい」を連呼していた。
「安土城を目指して真逆の方に行くとは……」
「まったくもって申し訳なく思ってます」
まさか方向音痴とは思ってもいなかったんだもん。
「今度からははぐれたらその場から動くなよ」
「はい……」
「むやみやたらと動きまわらない事!」
「はい……おとなしくしてます」
語気の荒い秀吉さんが怖くて顔もあげれないよ。
きっと眉を吊り上げて怒ってるんだろうな。
「まったく……」
「ん?」
大きなため息を吐く声が聞こえて、しばらく無言になってしまう秀吉さん。
そんなに私のことを呆れてしまったの?!
不安になってきて体が震えてきてしまう。
秀吉さんの様子が気になってしまい顔を上げようかと迷っていると
「え……?」
大きくて温かな手のひらが私の頬を包み込んできた。
「悪かったな」
「秀吉さん……?」
まさか秀吉さんが謝ってくれるとは思わなくて、びっくりして顔をあげてしまった。