第9章 美しい人との出会い
「なんだ?!テメーは?!」
「退屈していたところだ。俺と遊んでもらおうか?」
「はあ?!ふざけんな!!」
私を取り囲んでいた男たちは刀を握りしめ、じりじりと間をつめていく。
「ふん……構えがなっていないとは……退屈しのぎにもならなんな」
余裕綽々な笑みを浮かべているけど、無理じゃない?
相手は5人もいるんだよ?
それにこの人の刀は私を抱きしめている男の喉元にあるし。
「女……邪魔だ。退いていろ」
「え……?」
何が起こったの?
男に抱きしめられていたはずの私は、気が付くとこの美しい人の背中にいた。
まるで舞うように動き、綺麗な線を描いていく太刀筋。
あっけなく男が6人地面に寝転がっている。
「……つまらん」
刀を鞘に収めるその仕草さえとても優雅に見える。
夕日を背にした男の人があまりにも綺麗で私は瞬きをするのも忘れてしまっていた。
世の中にこんな綺麗な人が存在するなんて、奇跡としかいいようがないよね。
「ん……?お前の顔に見覚えがあるような?」
「っ……!」
細くて綺麗な指が私の顎に触れてるんですけど?!
不思議な色の瞳に見つめられて、心臓がバカみたいに動きだしてくる。
恥ずかしくて顔は熱くなるし、どうしよう?!
「どこで見たんだ?」
「え……?」
私には会った記憶がないんだけど?
(こんなにも綺麗な人に会ったら忘れるわけないよ)
しばらく私を見つめていたけど興味がなくなったのか何も言わずにさっさと立ち去ってしまった。
私はただ呆然としてその背中を見送る事しか出来ずに……
あの人が触れた顎が甘く熱を持っているのを感じながら___