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夕焼けの色、歓びの種。【西谷夕】

第3章 制服デート


 「それ着ると急にお兄さんになるねぇ…。そっか、夕ももう中学生かぁ」
 みなみの感想はやや親戚のおばさんじみているが、つい先日までランドセルを背負った姿を見慣れていたため、思わずしみじみと見入ってしまっているようだ。
 「おう!てワケで、やっとできるぜみなみ!」
 「何を?」
 遠慮もなくみなみのベッドにどかっと腰かけ、どんと胸をたたいて自信満々に言い放つ。
 「制服デート!」
 え、ちょっと何言ってるかわかんない、という表情のみなみが少し間を置いたのち、
 「でも私、もう大学行くから制服ないんだけど…」
 冷静に返した。
 がんっと目に見えてショックを受ける夕。
 「しまったあぁぁ~~~~!大学…大学かあぁ~~~!」
 そうだった。そういえば一か月ほど前、みなみは長かった受験生活を終え、電車で数駅離れた県内の大学へ進学を決めたのだった。
 みなみの合格祈願のお守りを買おうと、隣町の有名な神社まで一人で無断で出かけて、夕が行方不明になったと近所中で大騒ぎになったのは、つい二、三カ月前のことだったではないか。
 夕もたいがい伸び悩んでいる方だが、みなみときたら、小学校を卒業したあたりから一向に背も伸びなければ胸も尻も大して育たないものだから、いつまでも女子高生やってるもんだと油断していた。
 「ちきしょう、大学め…」
 歯噛みしている夕をおかしそうに見やりながら、みなみはクローゼットを開けて、つい先日卒業を迎えたばかりの高校の制服を手に取る。
 「今日ならまだ私もぎりぎり高校生だし」
 ハンガーにかかったままのセーラー服を手に持ったままくるりと振り向き、にっと笑う。
 「制服デート、しよっか」
 どき、と夕の心臓が跳ねる。
 毎日見ているはずのみなみの顏なのに、ときどき、見たこともないほど可愛く見えるときがある。こんなときは妙にどぎまぎして、思わず目をそらしてしまう。
 そして、さらに困ったことにその頻度は、近頃ますます増えてきている気がするのだ…
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