第3章 制服デート
おろしたてピカピカのブレザーと、年季の入ったセーラー服の二人組が、仲良く手を繋いで田舎道を歩いて行く。
もうずいぶんと西へ傾いている日が、アスファルトの舗道に二人の影を長く映し出す。
隣を歩くみなみへ目をやると、滑らかな頬は夕焼けに染まり、瞳は夕日を映して美しく潤んでいた。夕の視線に気づくとこちらを振り向きふわりと微笑む。
「夕は、部活なにやるとかもう決まってるの?」
「俺はバレーボールをやる!」
「そっか。夕、少年バレーやってたんだっけ。見に行った試合、すっごい活躍してたもんね」
「おう!千鳥山の男子バレー部、俺が全国に連れて行ってやるぜ!」
頼もしいなぁ、夕は、と目を細めて笑う、みなみ。
あの夏の日、屈み込んで合わせてくれた目線は、今はほとんど同じところにある。
俺はどうしてもみなみを好きなんだけど…と夕は思う。
みなみには、みなみの世界があるのだろうか。
俺のいない、あるいは俺のいる未来を、みなみは考えたりするのだろうか。
「中学校、楽しみだね。バレーボール部でしょ、それから、購買でパン買ったりとか」
どちらからというでもなく通りがかりに入った公園の鉄棒にもたれかかりながら、みなみが続ける。
「制服デートしてくれる彼女も見つけなくちゃね」
目が回るんじゃないかと心配になるほど延々と連続逆上がりをしていた夕が、その言葉を聞くと、たんっ、と久しぶりに地面に足を付いた。
「俺、彼女なんかいらねー。俺はみなみを嫁にもらうから、他の女はほかの男と付き合えばいいから」
思いがけない真剣な目に見据えられて、夕日を映した彼女の瞳が揺れる。
「ま、まだ言ってくれるんだ、それ。あはは…」
さらりと流すように笑って目を逸らすみなみの手首を、夕の手が掴む。まだ小さくて柔らかい、子供の頃と変わらない、手。けれどその力は意外なほど強く、少しの力では逃れることができなかった。
はっと上げた目が、真剣な夕の視線に絡めとられる。
「俺はいつでも本気だ。本気じゃねーことは言わねえ!」
「ゆ…」
「つーかお前こそ大学行って、チャラチャラしょーもない男に引っ掛かってんじゃねーぞ!俺が大人になるまで大人しく待ってろ!」