第9章 誕生日プレゼント
「夕、お誕生日おめでと」
ソファに並んで座り、みなみの入れた紅茶を飲んでいるとき、唐突に彼女は切り出した。
「サンキュ。それ言いに来てくれたのか?」
うん、と少し照れたようにみなみは頷き、それから持っていた紙袋から丁寧に包装されたプレゼントを取り出した。
「あと、これ」
「マジで!くれんの!?ありがとな、みなみ。開けていいか?」
「いいけど、大したものじゃないよ」
みなみからのプレゼントなら、何だって嬉しい。
欧米人よろしく豪快に包みを破り開けると、大判のスポーツタオルが入っていた。黒と橙色の、なんとなく烏野のユニフォームに似た配色だ。
「ありきたりだけど文句言わないでよね。このあいだ中原くんにアドバイスもらおうとしてたのに、夕が邪魔したせいで結局聞けなかったんだから」
「中原?………ああ、あいつか」
「中原くん、高校までバレー部だったらしいから、ほしいものとか、分かるかなって思って」
夕の中でなにかがすとんと腑に落ちた。そうか、あの日みなみがあいつと一緒にスポーツ用品店にいたのは……
結局自分で選んだんだけど、とみなみは言う。
「これ、前に、夕が着てたユニフォームに、似てたから。」
「……っお前、試合見に来てたの!?いつ?」
高校に入学して以来、滅多に会いにも来なかったみなみが、俺の試合を、いつの間に。
「いつもだよ」
少し笑って、みなみは答える。
「試合があるときはおばさんが教えてくれてたし、夕の出る試合はいつも、見に行ってるよ、私」
「みなみ」
たまらなくなり、抱きしめたくなって手を伸ばす。
言いたい。また駄目だって言われるかもしれないけれど、また傷つくかもしれないけれど、それでももう一度、好きだって伝えたい。