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夕焼けの色、歓びの種。【西谷夕】

第9章 誕生日プレゼント


 「みなみ、俺」
 「夕」
 夕の動きを制するように、伸ばされた手を両手でそっと包み込んで、みなみは言った。
 「私は、あなたの一番のファンだよ。夕が、ボールを追う姿がとっても好き。」
 まっすぐ夕の目を見据え、眉尻を下げて、微笑む。
 「あなたのことが、何より大切だよ、夕。これからもずっと応援してる。だけど、恋人にはなれない。あなたにはもっと年が近くて、ふさわしい人がきっといるよ」
 そこまで一気に言い切ったみなみは、少し泣きそうな顔になる。
 「ごめんなさい、夕。結局、これが私の答えなの」
 時が止まったような静寂が、二人の間に流れる。
 ―――何も、言えなかった。
 みなみの言葉があまりに真実味を帯びていて、これがまるごと彼女の本音なのだと、夕の心のどこか深いところにそれが突き刺さった。


 あれから、みなみと夕の関係は表面上元に戻った。
 みなみは相変わらずちょっとしたことで西谷家を訪れるようになったし、その逆も然りだ。連絡を取り合うことも増え、お互いの部屋でとりとめもない話を夜更けまでしたりすることも、元のように増えた。
 けれど夕にはなんとなく分かっていた。これまでとは決定的に違う何かが、彼女の態度の底にあることに。

 それでもみなみの手を放したくない。生きている限りそばにいたい。
 往生際悪く、俺はそれでも、みなみを誰にも渡したくない。
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