第7章 休日の嫉妬
俯いた姿からは、その表情は見えない。けれど、夕は、じっとみなみを見つめて何事か考えているようだった。
「みなみ、おまえ、俺のこと好きだろ」
やがて口を開いた夕の言葉に、みなみが顔を上げる。
「え、な、……は?」
「だって、お前」
ぐい、と夕がみなみの頬を両手で挟む。
みなみは驚いたようにこちらを見たが、その瞳は少し潤んでいて、頬は赤かった。
「好きじゃない男にそんな顔すんのかよ、お前」
「な、なに言ってんの…?」
放して、と我に返ったらしいみなみが顔を背けて夕の手を振り切る。
「ごめん、もう行くから。友達、待たせてるし。」
「……付き合ってんのかよ、あいつと」
「付き合ってません。今日は買い物に付き合ってもらってるだけ」
そう言うと、今度こそみなみはくるりと踵を返して、振り返りもせずに歩いて行く。
まばらな人の波を縫ってフロアの奥へ消えていくその背中を夕は黙って見つめていた。
「あ、のう……」
背後から、遠慮がちな声が聞こえ、我に返った夕が振り返ると、気まずそうな顔をした龍が立っていた。
「!!!!!わり!龍!忘れてた!!」
「あ、いや、忘れられてんのは見たらわかるからいーんだけどよ」
ま、とりあえずどっか入って飯でも食うか、という龍の提案で連れ立ってフードコートへ向かった。
「ノヤっさん、聞いていいのか?さっきの」
「あー」
別に、隠すことでもないしな、と言いながら、手に持ったハンバーガーをかじる。それから、はた、と先程の会話を思い出す。
「てか龍、どっから聞いてた?」
「『彼氏ができたならそう言えばいいだろ』のあたりだな」
龍の返事に、ほとんど全部じゃねーか、と思わずテーブルに突っ伏す。
「やべぇ!!超はずかしい!!!俺死ぬほど女々しかった!!忘れてくれ龍!」
「いや絶対忘れらんねーし、あんなとこであんな大声で、女々しいどころかすげえ男らしいと思うぜ!ドンマイ!」
気遣いからのフォローなのか本音なのか分からないが、夕は、余計恥ずかしーんだけど…と赤面して目を逸らしている。