第7章 休日の嫉妬
「……幼馴染なんだ」
ざわざわと騒がしいフードコートの中で、ぽつり、と夕が口を開く。全くこういう話向きではなさそうな上に、好奇心丸出しで余計な詮索をしてきそうなイメージの龍は、意外にも黙って、夕が少しずつ話すのを聞いていた。
「ずっと、ホントにずっとガキの頃から一緒でさ」
思えば他人にみなみの話をするのは初めてだ。
「俺…もういつからかも分かんねーけど、あいつと結婚するんだって、なんとなく思い込んでた」
氷が解けてずいぶん薄まってしまったコーラを一口飲む。
「でも、ふられちまってさー。何回告っても、そのたび何回もふられてよ」
にっ、といつもの大きな口を開けて、夕が笑う。
「ノヤ……」
「年上なんだよ、かなり。あ、冴子ねーさんより上だな」
「うお、まじか」
「まあ、あれだな。生まれてから今日までずっと、子ども扱いだ。でもな、それが理由で振られてるのは分かり切ってるから、俺はぜってー諦めねー。大人なんか、嫌でもそのうちなるんだからな!」
ま、そんなとこだ!質問あるか!と夕は話を締める。
「ね、ねーよ。どこまでも男らしいなノヤっさんは。しかし俺はちょっとショックだぜ…」
ノヤっさんから色恋沙汰の話を聞く日が来るとはな…負けてらんねぇ、と龍はブツブツ言っている。
その言葉を適当に聞き流しながら、夕の視線は、騒がしいフードコートの中、いるはずもない彼女の姿をなんとなく探して宙を彷徨った。