第5章 受験
「なー、みなみ」
もう一度名前を呼ばれ、ん?と目を開けると、すぐ近くに夕の顔があったので、ビックリして跳ね起きつつ後ずさる。
「な、ななななに!?近いんだけど!」
「合格祝い、くれよ」
「合格祝い…って……」
入試前夜の会話が頭によみがえり、かぁっと顔が熱くなる。
「キス、させろよ」
ずい、と夕が身を乗り出してくる。
「や、ちょ、待ってよ夕、」
ずりずりと後ずさるが、あっという間に壁際に追いつめられる。しかもまずいことに、ここはベッドの上だ。
「何がそんなに嫌なんだ?」
「嫌っていうかあの……、こういうことは恋人とするもんじゃ」
「じゃあ恋人になろうぜ」
「む、無理」
なんでだよ!強情だなお前は!と、夕の手がみなみの両腕を掴み自由を奪う。
夕の端正な顔が、どんどん近づいてきて、みなみは精一杯顔を背けてきゅっと目をつぶる。目を閉じていても、夕の息遣いを近くに感じて心臓がばくばくと音を立てる。
だめだ、これ、逃げられないじゃん、キスされる……
そう思った瞬間、頬に、ふわりと唇が落とされるのを感じた。
「ゆ、夕…」