第5章 受験
バタバタバタ!!と騒々しく階段を駆け上がる音がする。
――あ、来るな、とみなみが身構えた瞬間、相も変わらずノックもなしに、扉がばんっ!と開く。
「みなみっ!」
今日が何の日かを考えれば用件はわかっているし、その勢いと表情で、結果だってもう想像がついている。それでもみなみは息をのんで思わず立ち上がり、夕の言葉を待った。
「受かった!!烏野合格した!!!」
やったーーーーー!と珍しくみなみが声を張り上げ、夕の両手をとってくるくる踊りまわる。
「良かったね、夕!おめでとう!」
「おう!ま、これが俺の本気だぜ!」
入試から合格発表までの一週間、当の本人はケロッとしていたが、みなみの方が胃が痛くなるほど結果を気にして待っていたのだ。
「はー、これでゆっくり眠れるー…」
冗談とも本気ともつかない安堵の言葉を口にし、脱力したように傍らのベッドにとん、と座りそのまま布団の上に身を投げ出す。自分のことのように合格を喜ぶみなみを、得意げな顔で見ていた夕も彼女の隣に腰かける。
「なあ、みなみ」
「んー?」
気の抜けた声で返事をするみなみに手を伸ばし、夕の手がみなみの髪に触れる。
「ありがとな」
夕に頭撫でてもらうなんて、初めてかもしれない。いつも逆だったから…とぼんやり考えながら、意外なほど心地好いその手の感触にうっとりと目を細めた。