第5章 受験
自室へ戻ったみなみは、なんとなく最近散らかり気味の机の上を簡単に片づけていた。
ここのところ毎日、遅くまで夕の部屋にいるので、ここへは寝に戻っているだけ、という状況が続いていたせいだ。
随分前に買って一度読んだきり置きっぱなしになっていたバレー雑誌を手に取り、パラパラとめくる。確か、けっこう後ろの方だったよね…
ページをめくる指が、目的を見つけて止まる。前回の中総体の表彰選手が紹介されている特集ページだ。
オリンピック有望選手…優秀選手…ベストセッター賞……と見るでもなくぱらぱらとめくってゆくと、最後のページにさっきまで目の前で問題集と格闘していた顔が、1ページ使ってでかでかと載っている。
―――ベストリベロ賞 千鳥山中学校(宮城) 西谷夕
上位入賞した時の最後の試合だろうか。腰を落としてレシーブをする瞬間の、躍動感に溢れた写真が掲載されている。
まったくもって、すごい、としか言いようがない。みなみにはバレーのことはわからないが、聞いているとどうやら全国で毎年一人だけ選ばれる賞のようで、彼女にはどこか遠い世界の話に思えた。
まだ全くボールに触らせてもらえない、と言っていたあの数か月後には、強豪と言われる千鳥山のバレー部で、夕は既にレギュラーの座についた。
一年生でレギュラーになり、体も小さい夕は、一部の先輩からの風当たりも相当厳しかったようだが、いつもケロッとして、本当に楽しそうに練習に打ち込んでいた。
何度も試合を見に行ったが、ボールを追う夕は本当にいきいきと輝いていて、かっこいい。勝っても負けても何かを得て、歯を食いしばり先へ先へと進む姿が誇らしかった。
ちなみに、本人は一向にモテないと思っているようだが、傍から見ているみなみは、試合会場で夕に憧れの視線を向けている女の子もたくさんいることを知っている。
ま、そりゃ、かっこいいよね、と小さく呟くと、雑誌をぱたんと閉じ、本棚の上の方の段へ差し込んだ。