第1章 春はあけぼの
翔くんはわたしの頬を撫でて、そっと唇を離した。
「寂しい思いさせてゴメンな……」
「ううん、わたしは……わたしは翔くんが元気にステージに立ってる姿、たくさん見てる。だから寂しくなんてないよ」
そう言うと、翔くんは困ったように笑って、わたしの肩を抱き寄せた。
耳元に翔くんの吐息が当たってくすぐったい。
「春歌……好きだよ」
ちらっと翔くんを見ると、ちょっと照れた顔。
可愛いって言ったら怒られそうだけど、可愛いから仕方ない。
「おっし!充電完了!」
照れ隠しなのか、突然立ち上がって伸びをした翔くんは、またニカッと笑って振り返った。
「じゃ、行ってくるな!」
「うん!行ってらっしゃい!」
春は始まりの季節。
これからまた、新しい一年がはじまる。