第5章 『(コイツ・・・大型犬か何かか・・・?)』
『やほ。
久しぶりだね、ローグ』
「・・・!
シオン、か?」
「わーい、シオンだー」
『おー、フロッシュだ。
今日も可愛いねー』
「フローもそーもう」
6月。
カラリと晴れた日に気ままに散歩をしていたシオンは覚えのある魔力を感じて、目的の人物に声をかけていた。
肩まである黒髪で前髪も長い青年ローグ。
そしてその相棒のピンクのカエルの服を着たフロッシュ。
思わぬ相手の登場に、ローグは微かに驚いていた。
一方のフロッシュは会えて嬉しいのかぴょこぴょことシオンに近づいてきた。
「クエストの途中・・・か?」
『んや、請け負ってたのは全部片した。
気まぐれに散歩してたらローグ見つけてさ。そっちは?』
「俺はクエストの帰りだ。
終わらせたのだが、馬車や汽車に乗るにしても・・・な」
「ローグ、酔っちゃうから」
『あー・・・。
大変だね。滅竜魔導士も』
「ああ・・・」
『私ヒマだし、一緒に行こっか?』
「・・・行く、とは?」
『セイバーのギルドの近くまで、そんな時間かかんないし。ローグだけなら酔い止めの魔法使っても大丈夫だと思う』
「酔い止めの魔法・・・使えるのか?」
『うん、使えるよ。どこぞの白いのにだけは使いたかないけどね。
ちょうど渡したいのあったし、馬車で行こう』
「・・・・・・ああ、では頼む。
(相変わらず嫌われているようだな・・・あいつは)」
「わーい、シオンと一緒におでかけー♪」
ローグがシオンに同乗を頼むと、フロッシュがまたもや嬉しそうにひょこひょこと跳ねた。
あーあ、うちのノーレもこれくらいの可愛げがあればなー。・・・いや、こんなに毎度キュンキュンさせられたら私の身が(精神的に)保たないか。あーあ。
とかなんとかシオンが思っていると、その足元の影からにょきっともこもこした黒い手が伸びてきて膝の裏目掛けて一撃。
ガスッ
『おう、っ・・・!』
「?、・・・どうした。シオン」
『・・・な、んでもない。
ちょっと日光浴び過ぎて立ち眩んだだけ』
「そうか・・・。
今日は雲が少なく日の光が強いからな・・・俺も、自分の属性が影だからその辛さは解る」
「ローグ、シオン・・・大丈夫ー?」
こてん、と首をかしげて見上げてくるフロッシュに2人は大丈夫だよと返した。