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太刀の女の子シリーズ

第5章 天然が武器




佳乃は困っていた。


「驚いたか?驚いただろう!」


いつものように短刀たちの世話をしながら畑仕事に精を出していたら、茂みからいきなり鶴丸が飛び出してきたのだ。長く茂みの中に隠れていたのか彼の頭には葉がいくつもくっついている。

「………頭に葉がいくつもついていますよ」
「そっちか!いや、ここは女の子らしく可愛い悲鳴を聞きたかったんだが」

小さな子供のように頬を膨らます鶴丸を茂みから引っ張り出し、その頭についている葉を一枚一枚丁寧に取り除いていく。

うわ、髪の毛ふわふわ。

サラサラと絡まらずに落ちていく髪に佳乃は人知れず感動した。刀剣男士のなかで唯一の女ではあるが佳乃は見た目を気にしない性格のため、髪もただ審神者が言うので梳いているだけなのだ。


「驚かすのもいいですがあまりやり過ぎるとまた木に吊るしてしまいますよ」

「おっとそれは勘弁だ」

「ほらお仕事の途中ですからそこどいてください」

「相変わらずつれねえな」

「…終わったら構いますから」


そう言うと渋っていた鶴丸の顔がニコリといつもの笑顔に戻る。彼は佳乃より年上だったはずなのだが、性格ゆえかまるで短刀たちのときのように甘やかしてしまう。
絶対だぞ!そう念を押して去っていった鶴丸に佳乃はひとつ、考える。

そういえば鶴丸さんはいつも私を驚かしてくるが、逆に私が鶴丸さんを驚かしたことはなかったなあ。

そのとき刀のときでは持ちえなかった心が軽く疼いた。人はこのような気持ちをなんというのだろうか、うーん、そうだな、好奇心ってやつだったか。
いつも驚かされているのだから一回くらい驚かしてもいいだろう。佳乃はそうひとり勝手に納得し、途中までだった畑仕事を開始した。




そんな佳乃の思惑を知らない鶴丸は、佳乃がいつもいる縁側でひとりのんびりとしていた。今日は珍しく佳乃が鶴丸に構ってくれるということで、年がいもなく心は高揚としている。
真面目で、世話焼きで、そしてなんだかんだ優しい佳乃のことを鶴丸は随分と好いていた。


「もうそろそろ畑仕事は終わってもいい頃なんだけどな」


待っている時間が暇過ぎてそう独り言をこぼしたときであった。


 
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