第5章 天然が武器
グイッと後ろから細く白い腕が出てきて鶴丸の首にいやらしく巻き付く。いきなりのことに目をパチクリさせながら後ろを振り返ると、そこには真顔で鶴丸に抱きつく佳乃がいた。
さっきまで畑仕事をしていたからだろうか、石鹸の匂いに混じって少しだけ汗の匂いがする。それがまた妙に艶やかな匂いで鶴丸の心臓が一度大きく飛び跳ねた。
「おっ!なんだなんだ、新しい遊びか?」
「………」
「…おい、佳乃?」
「………」
「な、なにか喋ってくれると嬉しいんだが」
いつもとは違う様子の佳乃に戸惑う鶴丸に、止めとばかりに佳乃の全体重がのしかかる。
「とっとととりあえず俺からどこうぜ!」
「………」
「佳乃!?」
鶴丸も刀ではあるが今は立派な男の身体をもっている。べつにこうして佳乃に抱きつかれることは嫌ではなく、正直なところむしろ嬉しいぐらいなのだが。
もろにあたってる!!!
むにっと女性特有の柔らかさを持つ胸が鶴丸の背中に押し当てられているのだ。このままでは鶴丸の中の燻っている感情がわきたってしまう、簡単にいうと、鶴丸は今、非常にムラムラしそうになっている。
煩悩を消そうとする鶴丸の脳内ではひたすら「払いたまえ、清めたまえ」と石切丸並にその言葉が紡がれていた。
そんな努力も虚しくあたふたと慌てる鶴丸の襟元から佳乃が手を入れ、つつっと鎖骨をなぞられる。
その瞬間ビクッと震えた鶴丸に佳乃は顔を近づけると、羞恥で真っ赤に染まる鶴丸の耳元で囁いた。
「びっくり、しました?」
は?