第4章 めんどくさいなあ
「あれは秋田と乱の二人とお風呂に入っていたときでした」
「ちょ!佳乃ちゃんってばまた刀剣男士たちとお風呂に入ったの!?」
「強請られましたので。それよりも話のつづきです…」
そう、それは秋田と乱の二人と一緒にお風呂へ入って三人ではしゃぎ、もうそろそろあがろうかとその腰を上げたときでした。
いつも私は五虎退や今剣と一緒にお風呂へ入るのが常でしたから今日もそうだと思っていたのでしょう、彼が、そう今主の目の前にいる彼がいつもより入浴が長い弟たちを心配してお風呂場へ様子を見に来たのです。
「…おーけー、審神者だいたいわかっちゃったよ」
もちろんお風呂へ入っていたわけですから私は全裸です。タオルを湯船に浸けるのは衛生的に悪いので、バスタオルを身体に巻いているわけでもありません。お風呂場へきた一期さんも悪気があったわけではなく、あれはただただお互いの不注意が招いた悲劇でした。
べつに裸を見られたことにこのように怯えているわけではありません。裸を見られて傷がつくわけでもなし、見たければ見ればいいという“すたんす”というやつです。「それもそれで女の子としてどうなのかなって審神者思うよ佳乃ちゃんッ」いいのです。だってもとはただの刀なわけですし。
問題はこの後のこと。
「ぁ、!!!!??すすすすすすすみません佳乃殿!弟たちだけだと思いつい開けてしまいました!!」
「いえ、お気になさらなくとも大丈夫です」
「あ゙あ゙!!私は女性にいったいなんてことを!」
「あの?」
「どうか責任をとらせてください!」
「…………は?」
「必ず幸せに致します。結婚しましょう」
彼の申し出はもちろん断りました。だいたい裸を見たからといって何なのです?減るものじゃあるまいし。
「遠慮しますどうかお気づかいなく」
「いえお願いします」
「遠慮します」
「私の気がすみません」
「遠慮します」
以下、懇懇とこのような会話が続きましてさすがの私も困りました。もはや彼の誠意には悪意すら感じてしまうほどです。
「もう私では無理だと主に助けを求めにここへきました」
話しながらぶるりと身体を震わせる佳乃はよほど彼の押しの誠意が恐ろしかったのだろう。悪意のない親切ほど対処に困るものはない、審神者には佳乃の思いが痛いほどわかった。