第4章 めんどくさいなあ
佳乃、それは審神者が呼び出した太刀の女の子の名前である。
審神者になってばかりの頃に呼び出したときは、その性別ゆえに扱いに困りそうだと思ってはいたが、審神者の予想に反して彼女は刀剣のなかでも比較的まともな部類であった。
太刀を振り回し敵を殲滅する男よりも男らしいその姿に、最初の頃は加州と一緒に震え上がって見ていたのが今では懐かしい。
「女が戦場に?そんな細腕でまともに戦えるのか」
唯一の女性の刀剣である佳乃をそう言ってからかった鶴丸は、翌日佳乃との一騎打ちで遠慮なくボコボコにされ庭の木に吊るされていた。
「佳乃さんを馬鹿にしないでください!」
「おしりぺしぺししてやりましょう」
佳乃の取り巻きである短刀たちが吊るされていた鶴丸の尻を木の枝で叩き出したのを無言で見つめていた佳乃に、審神者や他の刀剣男士たちは彼女を今後怒らせないようにしようと心に誓った。
「主よ助けてくださいっ!」
そんな出会った当初から男らしかった彼女が何をそんなに怯えているのか、審神者の返事も聞かずに駆け込んできた佳乃はいそいそと審神者のうしろへとその身を隠す。
余程のことがあったのだろうか?審神者がたずねようとしたとき、大きな音を立てて部屋の襖が開かれた。
「失礼いたします、ああ、佳乃殿やはり主殿のところに来られたのですね」
涼しげな笑顔の一期一振が審神者のうしろに隠れている佳乃へ手を伸ばす。その瞬間うしろから聞こえてきた息を呑む音に審神者は咄嗟に一期一振の手から佳乃を守った。
とにかく二人とも何があったのか話してくれないか、となんだかいつもと違う二人を目の前に正座させる。
「何故一期一振は佳乃を追いかけまわしてるの?そしてなんで佳乃はそんなに一期一振に怯えてるの?」
それは、と一期一振が口を開きかけたときそれを遮るように佳乃が話し出す。一期一振に話させたら頭の回転の早い彼のことだ、いいようにことを運ばされると思ったからだ。