第5章 天然が武器
話の展開についていけない鶴丸が口をポカンと開けるのとは対照的に、佳乃はすごく満足そうな笑顔である。
「ああ、うん、びっくりしたな」
細い声でそう鶴丸が返事をすると、今まで密着していた身体をぱっと離される。
「いつも鶴丸さんには驚かされるので、今度はこちらから仕掛けてみました」
「え?…うん、は?」
「これはこれは、そうとう驚かれているようでなにより。こうするとどれだけはしゃいだ短刀たちもぴたりと大人しくなるのです。まさか鶴丸さんもそうなるとは思いませんでしたが、見事大成功ですね」
確かにびっくりはしたが………。
鶴丸への悪戯が成功してニコニコといつになくご機嫌な佳乃に、鶴丸は人知れず溜め息をつく。
相変わらず警戒心がまるでないやつだ。むしろこれはおそらく男として見られていないのであろうな。
「びっくりはしたが、もう二度とそれはしないでくれ」
「え、何か問題がありました?」
「ああ、むしろ問題しかなかった。………他の刀剣男士共には絶対にするなよ」
「むー、はい、わかりました」
ぶすくれる佳乃の頭をガシガシと乱暴に撫でる鶴丸の背中には、いまだ佳乃の柔らかい感触が熱を持って残っていた。