第12章 荒浜海士仁
「あ、ちょ、何をする・・・・ッ、イダッ、ち、やめ、耳が・・・ッ、アダダダダ・・・ッ、もげますって、やめろ、このッ!!!」
「どれだけ人を振り回せば気がすむんですか、このバカ女が!いい加減にしないと流石の私も堪忍袋の緒が切れますよ!?」
「何言ってんですか。干柿さんには堪忍袋なんてオプションは初めからついてないでしょう?ないんですよ?知りませんでした?」
「知りませんでしたねえ?そうですか。私には堪忍袋がない?ほう、成る程」
「納得なさいました?そりゃ良かっ・・・ギャフッ」
「・・・プ・・・ッ・・・。ギャフなんていう人初めて見ましたよ、バカみたいですねえ」
「く、頭が吹き飛びそうな手刀食らったらギャフも出ますよ!?・・・・屈め。屈んで頭出せ。試してみろ、ギャフが出るかどうか。手伝うから。心を込めて手伝うから。やらせろ?てかやらせて下さい」
「やりたきゃやればいいでしょう。わざわざ私を屈ませないでも、好きなだけやりなさい?さあ、どうぞ。・・・・・・、・・・フ・・・誰が、弁慶の泣き所を、爪先で蹴れと言いました?あなた、頭も耳も損ないっ放しで、どんどん手が付けられなくなって来てますよ?ええ?」
ドカッと地べたに何かがぶつかるような音がして、イタチは眉をひそめた。
「・・・ぃちィィ・・・つうぅ・・・な、なんて事するんですか!人の足を掴み上げて、危ないでしょう!?バランス崩して頭を打ったらどうするんですか!」
「どうするもこうするも、あなた、たった今バランス崩して頭打ちましたよね?どうです?どうなりました?」
「バ・・・バカか!!!痛いに決まってるでしょうよ、そんなん!!」
「じゃそう言えばいいじゃないですか。何騒いでるんだか、この人は」
「ムカつきますねえ。足を離して下さいよ!ぅう、いてて・・・記憶が損なわれそうに痛いですよ、これ・・・」
「一度損なったらいいんですよ。一からやり直しなさい。今よりひどいバカにはなり様がないんだから、是非そうすべきです。損なうまで頑張りますか?いいですよ?何度でもお手伝いしますからね。さあ行きますよ?」
「はは、何言い出してんだか、このサディストは。行きませんよ、絶対行きません」
「・・・・・・・」
こんな事の為に俺は後ろを向いているのか・・・・?
イタチは馬鹿げたやり取りを聞きながら真顔で首を傾げた。