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連れ立って歩く 其のニ 砂編 ー干柿鬼鮫ー

第12章 荒浜海士仁


深水もカンクロウと同様に思ったのか、渋々と付け加えた。

「この件のみならず、海士仁には医師になるべき資質、即ち倫理観が著しく欠けていました。依って破門と相致した次第。間違った判断だとは今も思っておりませぬ」

「間違いかどうかはこの際問題ではない。海士仁とやらはまた現れるのではないか?」

我愛羅が険しい声で言った。

「破門したのが五年前と言ったが、あの男は今まで何をしていた?何故今になってあなた達を襲って来た?」

「散開が引き金になったのは間違いないでしょう。・・・・あれは磯影になりたがっておりましたから、散開にあたって思うところも大きかった筈です」

「・・・成りたいと言って簡単になれるものじゃなかろう」

エビゾウがいささか呆れた様子で言った。しかし深水はこれに頭を振る。

「黄泉隠れをする者が磯影になるのです。海士仁にはその資格があり得る。あれは確信もなしに大きな事を言う程愚かな男ではありません」

あんな言葉足らずで無精な話し方するヤツがそんなに賢いのかよ。にやにやしやがって気に食わねえじゃん。

指輪をクルクルと回し見ながら、カンクロウは内心肩をすくめる。あの海士仁とかいう男、いかにも好きになれない。話を聞く限りそれが当然なのもわかるが、それを抜きにしても矢張り好きになれない。海士仁が悪い人間でなくともきっと好きになれないだろう。性の問題だろうか。

「あやつ、この半月でビンゴブックの上位級に載っておる。所謂大首じゃ。あちこちで派手にやらかしとるようじゃな」

チヨバアは面倒そうに杏可也を見やって溜め息を吐いた。

「さても面倒なモンを持ち込んで来たもんじゃな、この女は」

ポツリと独りごちる。

「ビンゴブッカーは身内で間に合っとるんじゃがな」

「・・・・・・・」

三兄弟は互いに視線を交わして、一様に目を伏せた。

今回微妙に絡んでいる暁はビンゴブックのアッパークラスの犯罪者ばかり集まった胡乱な組織であり、そこにはチヨバアの孫サソリがいる。口の悪いチヨバアが暁のサソリを心配し続けているのは周知の事。

「しかしあなたとあの女性は破門にまつわって恨まれているのだろうと解るが、どうして叔母上まで?あなたに紹介したのが叔母上だからか?・・・・いや、賢しい男のする事にしては動機が弱すぎだ。一体何故なんだ?」
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