第1章 砂の三兄弟
テマリの言葉に我愛羅は眉根を寄せた。
「・・・あの里と繋ぎをとるのは簡単ではない。叔母上が阿修理叔父に嫁いでいたときでさえ砂と磯は接触がなかった。父上が熱心でなかったのも一因だが、一体にあの里は用心深く他との接触を厭う。木の葉には何らかの下地があったのだろう」
シカマルと藻裾が組んで任務に当たっていたのを知っているカンクロウは思うところがあったが、賢明にもその件に関して口を噤んでいる。
「まァ磯程度の小里が散開したところで、こっちにゃあんまり関係ねえじゃん?俺ァ叔父貴があの叔母さんを連れて来るまであんのも知らなかったもんな、磯なんて里」
「私もだ・・・思うと不思議だな。叔母上の事もよく知らない。たまに会っても笑い交わすばかりであまり話さなかった気がする。・・・何かこう、気を使ってしまうというか、ガードが堅いというか・・・」
「ハハハ、そォいやテマリ、叔父貴だってのに夜叉丸は呼び捨てだったもんな。なのに叔母さんは叔母上呼ばわり、気ィ使ってたのか。プ、知らなかったじゃん?」
「うるさい!お前はまた誰にでもジャンジャン気兼ねがなくて羨ましい。神経が太いんだな」
「気遣ってフランクであろうとする事もある。カンクロウはそういう点では大人だ」
我愛羅はカンクロウとテマリを見やって静かに言った。
「それに夜叉丸は特別だった・・・」
物思いに沈んで我愛羅は視線をさ迷わせる。
「少なくとも俺にとっては」
カンクロウとテマリは目を見交わしたが、互いに言葉に詰まって黙り込んだ。
亡母の弟である夜叉丸は、孤独だった我愛羅の最もそば近くで彼を支え、愛情をかけた優しい男だった。
彼が亡くなって久しいが、我愛羅にとって夜叉丸の話は触れると痛い傷になっているのだろう。我愛羅が夜叉丸の名を口にしたのは久方ぶりの事だった。
「まあよ。そのうち叔母さんの顔も見れんじゃん?ずっとこのまンまってこたねえよ。ここはぐっと我慢してよ、そンとき色々話したらいいじゃん。磯で医者だったってオッサンも役に立ってくれんじゃん?こんだ砂でその腕を見せて貰おうじゃん」
「ヤブでなければいいがな」
テマリが腕を組んで口角を上げる。
「噂しか知らぬ里の事、あまり期待し過ぎないんだな。足をすくわれるぞ」
「よく知らない相手だ。期待のしようもない」
我愛羅は素っ気ない。