第1章 砂の三兄弟
「うわ、冷た・・・男の嫉妬は見苦しいじゃん?止めとけ、我愛羅」
「知らない相手では嫉妬も出来ない。それだけだ」
「・・・チヨ婆様とエビゾウ爺様がいなければ、あの男、今頃砂漠の塵になっていたな。そして我愛羅は生涯叔母上に憎まれていただろうよ。良かったな、我愛羅、そんな事にならなくて」
「・・・何が言いたい?」
テマリの言葉に我愛羅は苛立ちと困惑の入り交じった表情を浮かべた。
テマリは困った様子で口をへの字に曲げ、ちょっと息を吐いてカンクロウを見た。カンクロウはその視線を受けて明らさまに迷惑そうな顔をしたが、テマリの頼み込むような目色に眉をしかめ、片口を上げて諦めた。
「あのな、我愛羅、オメエが叔母さんが好きだってのはわかるよ。あの人は美人ってんじゃねえけど、何か綺麗だもんな。声も優しいし、何もかんも円くて、悪かねえよ」
「だから何が言いたいんだ、お前たちは?」
今度は苛立ちを隠しもせずに、我愛羅はカンクロウとテマリにきつい目を当てた。
カンクロウはこっちを見るテマリを敢えて見返さず、我愛羅の視線を受けてまた片口を上げた。
「お前と違って俺たちはあの叔母さんにはなかなか油断なんねえとこがあんじゃねえかなって思ってんだ。悪ィ人じゃねえよ?そらわかってる。けど、底が見えねえってえか、本心がどこにあんのかわかんねえってえか、ポヤーっとした見た目だけじゃねえんじゃねえのかな、あの人。お前はチビだったから覚えてねえかも知んねえけど、チヨば・・・」
テマリが肘でカンクロウを突いた。
カンクロウは顔をしかめて我愛羅から目をそらした。
「正直、礒の人間は苦手じゃん・・・・ま、何となくな、お前があんまり叔母さんに気をとられてっから心配してんだって話だよ。まあ、考えすぎかもしんねえけどよ・・・なあ?」