第10章 天然vs口巧者
リーがボロボロ涙をこぼしながら傍らの女に食って掛かった。
「な・・・・何なんです、あなたは!?どこから湧いて来たんですか!?いきなり現れてガイ先生の悪口をいうなんて、このボクが許しませんよ!?あれ!?怪我してるじゃないですか!?手当てしなきゃ駄目ですよ!?もう!!何やってるんですか、毒が傷にしみるでしょう!?大丈夫ですか!?」
傷の痛みを紛らわすために手をパタパタと振っていた女は、眉をひそめてリーを見返した。
「やっぱり毒ですか、コレは。何ですか、貴方たちは、バイオテロでも企ててるんですか、カレー粉で?バカな。私は自爆テロならぬテロ自爆の瞬間に居合わせてしまったと、そういう事ですか?何たる間抜けな・・・・・」
「テロ!?何て事言うんです!あなたにはボクたちがテロリストに見えるんですか!?こんなに愛と正義と青春に溢れたボクたちがテロリスト!?」
「いや、お前と一緒にしないでくれ。少なくても俺は愛と正義と青春なんかに溢れかえってはいない。普通だ」
ネジがキッパリ否定して、テンテンも大きく頷いた。
「アタシだって。愛と正義と青春にむせかえってるのはリーとガイ先生だけでしょ?そのガイ先生がテロの主犯でリーが実行犯だけどさ」
「何だ、そりゃ。どんな愛と正義と青春だ。・・・謝れ。カレー粉と私に取り合えず謝っとけ。食べ物で何やらかしてんだ。駄目だろ。しかしカレーの殺傷能力半端ないな。勉強になった。胡椒メじゃない。驚いた」
女はしかめ面で言うと辺りを見回した。
「・・・・・で、つかぬ事をお伺いしますが、ここは何処です?」
「・・・・・・・」
ネジとテンテンが顔を見合わせた。
リーが腰に手をあてて女の方に身を屈める。
「ここは砂の里です。それよりその怪我。出血がひどいですよ。早く手当てしないと。一体どうしたんですか?」
怪我に手を伸ばしたリーから、女はスッと身を引いた。
「ありがとう。しかし大事ありません。自分で手当て出来ますから」
「だって両手とも怪我してますよ?やり辛いと思います。遠慮しないで下さい」
「あ、コラ!触っちゃいけませんッ」
「え?」
尚も怪我に手を伸ばしたリーに、女が声を上げた。
キョトンとするリーから十分に距離を置いて、更にじりじりと後退しながら女は手を振る。
「もう行きます。お騒がせしました」