第8章 道具としての、牡蠣殻という者
カンクロウが牡蠣殻に目顔で挨拶した。牡蠣殻も目顔で礼を返す。
それを見咎めたテマリが眉を上げてカンクロウを見上げたが、カンクロウは気付かぬ振りで見返さない。
牡蠣殻は片目を細めてそれを見やり、テマリがこちらに視線を移す前に二人から目を反らした。
「チヨバア様・・・」
我愛羅が深水と牡蠣殻を見比べながらチヨバアを促した。
「ん?おお、深水は知っておろう?そっちの地味くさい女は牡蠣殻磯辺。深水や杏可也と同じ磯の者じゃ。磯影の補佐をしとったが、散開の際里を抜けたんでな。今は只の地味女じゃ」
「只の女を何故囲う?」
テマリがすかさず切り込んだ。
「怪我して弱っとったら助けるわ。そりゃあれじゃ、ホレ、カンクロウ、あれ、あれ」
「何だ、あれあれって。義を見てせざるは勇無きなり?」
「ん、それじゃ。そういう事じゃ」
「そんな話を聞きに来たのではない。チヨバア様」
「相変わらず真面目じゃな、我愛羅。ちょっとは肩の力を抜かん事には風影なんぞ務まらんぞ?」
我愛羅とチヨバアが軽く角突き合うような雰囲気になるのを、カンクロウが割って止めた。
「ちょっと待てって。順番に話して貰わないと考えがおっつかねえじゃん?いちいち突っ込まねえで、黙って聞いとこうじゃん。てか立ち話も何ですよとか、先ずは座ってお茶でもとか、そういうのない訳?ずっと突っ立ってんの?体育会系の反省会?勘弁じゃん。俺は文系だっつうの」
「・・・・・・・」
「何よ?何か文句あんのかよ?」
「・・・文系か。すまない、カンクロウ。兄弟だというのにまるでわかっていなかった。俺はお前は帰宅部だと思っていた。・・・許せ」
「・・・・・バカじゃねえの。帰宅出来てねえじゃん?忙しくしてんじゃん!テメエこら我愛羅、いよいよ労災要求するからな!?全額払えよ?何なら最高裁までいったろうじゃん!!!」
「落ち着けカンクロウ。冗談だ。肩の力を抜いてみた・・・」
「我愛羅の真面目さと素直さは美点と紙一重の宿業みたようなものだ。わかるだろ、カンクロウ」
テマリが腕組みして笑いながらカンクロウを宥める。
「わかるだろじゃねえじゃん。こっちの肩に力が入るっての!」
「肩揉んでやろうかじゃーん?」
「何ソレ、まだ言ってんの?エビゾウ爺様?気に入った訳?」