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連れ立って歩く 其のニ 砂編 ー干柿鬼鮫ー

第7章 苦い依頼


砂の里のすぐ表、砂漠の中に疎らに点在する木立の下に、木の葉のガイ班こと第三班の三人がいる。
間もなく陽も暮れきって夜の帳が下りようという頃。里の外にいるにはいささか剣呑な刻限だ。

「さあ、先ずはどこから手をつけますか?」

ぐんぐんと体を動かして見るからに勢いを持て余しているリーに、テンテンが深い溜め息を吐く。

「・・・散々走ってきてまだウォーミングアップしながら話したいんだよね、リーは」

「準備体操は大事ですよ!忍びともあろう者が足を挫いたり手を捻ったりしていては話にならない。体は常に柔らかく温かく!いつ何時でも即座に反応出来るようにしてなきゃいけません!」

「やる気があるのは良い事だが、少し落ち着け。お前の声は大きすぎる」

辺りに気を配りながらネジがリーを嗜めた。
これから砂に潜入して女を一人、木の葉に連れ帰る。目立っていい事はない。

夕間暮れに染まった砂漠が美しい。これから月が昇れば、この砂漠はまたまるで違った顔を見せるのだろう。

「ネジ、出掛けにシカマルと話してたね?何の用だったの、彼?」

木の葉を出てからずっと気になっていた事をテンテンは口にした。

三班が待ち合わせた場所に、昨今散開した磯という里の相談役を担ったシカマルが現れたのは偶然ではないだろう。

これから三班が連れ出す相手は散開で磯を抜けた磯人だ。しかも小里とはいえ、磯影の補佐をしていたという所謂幹部の立場にあった者。

ネジは腰に手を当てて足元の砂礫を爪先で蹴り散らした。

「・・・これから拐う相手の詳しい話を聞いた。どうやら顔見知りらしい」

「不思議はないですね。シカマルくんは磯人の相談役、ここのところアドバイス役の磯の女性といるところをよく見かけましたし、磯には顔がきくんでしょう」

リーが何を今更という様子で丸い目をネジに向けた。

「それでシカマルくんは何て言ってたんですか?」

何だかんだでリーも気になっていたのだろう。ネジに先を促す。

ネジは秀でた額にシワを刻んで、東の空にかかるまだ色淡い月を上目使いに見上げた。

「砂の照り返しで月が思いの外明るくなりそうだ。ぐずぐずしない方がいいな。時間が経つほど目に立ち易くなる」

「なるほど、そうですね。では続きは後で・・・・」

言いかけたリーをテンテンが遮った。

「移動しながら」
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