第24章 追うか探すか
「・・・・なくはないでしょうねえ。殊更あなたたちに話すような事でもありませんが」
「ああ、そう?・・・ふうん・・・あなた干柿さんだよね?確か霧隠れの怪人だか尾の無い尾獣とか呼ばれてる・・・・」
「それがどうかしましたか」
鬼鮫は丈高い体を反らして片口を吊り上げ、じっとカカシを睥睨した。
カカシはフッと笑ってその視線を躱す。
「磯の女と親しく連んでるって噂は本当かなあと思ってね。どうなの?牡蠣殻と会った?仲良く語らった帰り?」
「・・・・・・・・」
鬼鮫はスウッと息を吸って凄みのある笑顔を浮かべた。
「どうしてあなたとこんな話をしなけりゃないんですかね?こう見えて今の私は際限なく腹を立ててるんですよ。当て馬になってくれると言うのなら願ってもない・・・・」
「うん?何だ、この大男は牡蠣殻の男か?そういう話なのか?随分壮絶な好みをしているんだな、牡蠣殻は。いや、悪くなどない。悪くなんかはないぞ!人の好みはそれぞれ、大切なのはハートだ!熱いハートがあれば顔なんて問題じゃない!ノープロブレムだ!あなたは気を落とす必要ない!大丈夫だ!心配ない!気に病むな!安心しろ!エラ呼吸と肺呼吸に大した差はない!全然一緒だ!変わりない!だから、だからあなたも生き抜いて!!!!」
カカシと鬼鮫を見比べて、ガイが熱く話へ割り込んで来た。
鬼鮫は明らさまに眉をひそめてガイを見やる。
「・・・・・何言ってんですか。エラ呼吸と肺呼吸は全然違いますよ?バカでしょう、あなた。何なんですか、この思考回路と言語中枢が完膚無きまで不条理に構築された不快極まりない珍妙な生き物は。変なモノを連れ歩いて、ペットの散歩はちゃんとリードをするのがマナーですよ?弁えなさい。保健所に連絡されたいんですか?」
「いいですよ、連絡して。てか、すぐして下さい」
「何だ、カカシ!照れてるのか!」
「・・・・・・この人はアレですか?絶妙に日本語らしく聞こえる他言語で話してるんですか?今のは訳すとどういう意味になるんです?」
「俺も通訳がなければわかりません」
「よくそんな相手と一緒にいますねえ・・・何かのペナルティですか」
「・・・俺そんなに悪い事しましたかねえ?」
「知りませんよ、そんな事。勝手に苦労の権化を連れて無駄足を踏んだらいい。下らない」