第24章 追うか探すか
「バンビは見る目あるね!お姉さん気っ風のいい気持ちいい女だ」
「フ。お姉さんは止めろ。テマリでいい。我愛羅、決定だ。藻裾はいずれ砂で受け入れる。何ならアタシが身元を引き受ける」
「いや、汐田が砂に来るのを止める理由はない。その場合、その身の振りようにも考えがある」
我愛羅はカンクロウをチラリと見て、テマリに頷いてみせた。
カンクロウは我愛羅の意味深な様子にビクリと背筋を伸ばした。
「何?何で俺を見んの?」
「ゆっくり休め、カンクロウ。今のうちに」
「え?は?何それ?ヤダちょっと、怖い怖い。待って待って、俺頑張るから。倒れるときは前のめりの感じで頑張っちゃうから。だから頼むからお願いだから、ちょっと聞かせて?・・・・何考えてんの?」
「・・・・・叔母上は・・・・・」
焦るカンクロウを尻目に我愛羅は遠くを見る目をした。
「今幸せだろうか」
「知らんよ。わしゃあのアバズレは好かん」
チヨバアが即答する。
「腹に一物あるなら、わかりやすくせえっちゅうんだ。グダグタと・・・・」
言いかけて口を噤む。
「・・・・まあいいわ」
エビゾウが物言いたげに口をモゴモゴさせたが、結局言いたかっただろうは呑み込んで肩をすくめた。
「木の葉の連中はもう行ったのかの?」
「・・・・行ったよ。伝書が来たらしいね。もやッとした顔で出ていった」
ハと鼻で笑ったテマリにカンクロウが顔をしかめる。
「牡蠣殻が消えたんじゃしょうがねえじゃん?連中、牡蠣殻を連れに来たんだから」
「わざわざ砂に忍び入ってな。気に食わん」
「・・・・何にせよ、その牡蠣殻はもういない」
我愛羅は波平と視線を合わせて腕を組んだ。
「生きているだろうか?」
「単刀直入に言ってわかりかねます」
淡々と波平は答える。
「連れて消えた相手が相手だ。どう転がるかわかりません」
トンビをさばいて立ち上がり、波平は口角を上げた。
「探しだすまでは、答えはお待ち頂きたい」
「見つかるのか?」
「見つけずにはすませませんよ」
目で藻裾を促して、波平は茫洋と言い切った。
「今のところは一度里に戻らねばなりません。またすぐお目にかかりましょう。失礼」
風が起こる。
最後に藻裾が我愛羅に手を振った。
「また」
我愛羅が頷いたのを潮に、磯の二人は消えた。