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連れ立って歩く 其のニ 砂編 ー干柿鬼鮫ー

第23章 大ハード


「・・・・・・・」

隠居部屋を出た我愛羅は、壁に背中を預けて俯き、目深く被ったフードの下からこちらを窺う人影に足を止めた。

「久し振りだね」

無言の我愛羅を見詰めて、カブトがフッと笑った。

「何だ、面白くない。驚かないのかい?」

「・・・・・俺を驚かせに来た訳ではないだろう?」

カブトを見返して、我愛羅は殊更静かに答える。

「砂に何の用だ、薬師。ここは気安く他里の者が訪れていい場所ではない」

「そう?まあ僕としても遊び半分に来た訳じゃないからね。用を聞いてくれるのなら話が早いよ」

もたせかけていた体を起こして、カブトは口角を上げた。

「深水は死んだようだね」

「・・・・・お前の知る筋合いはない」

我愛羅は僅かに眉根を寄せて煩わしげに答えた。

「それがそうでもない。彼と僕は知己の仲でね」

カブトの言葉を聞きながら、我愛羅は周囲に神経を配った。複数の気配がある。

カブトは楽しそうに我愛羅を眺めながら、フードを上げた。

「形見を譲り受けたいんだよ。・・・・本当は彼の手から直に受け取りたかったんだけどね。残念だ」

「空台詞は止せ。深水師を冒涜するな」

「フッ、深水師ね。この僕の知己だったヤツを師呼ばわりか。君は何か勘違いしてるようだ」

「彼の過ちは既に彼自身から語られた。貴様の妄言に耳を貸す気はない」

「へえ。話したのか。成る程、あの男らしくて笑えるね。打ち明けたところで何が変わる訳でもないのにな。結局深水は最期まで愚直だった訳だ?」

可笑しそうに言ったカブトに我愛羅は目を細めた。

「愚直である事の何が悪い。他人を愚弄するより愚直である方が俺には好ましい」

「君に好かれたって仕様がないだろう?恋女房を教え子に奪われたんじゃ他の何も深水の慰めにはなりはしないよ」

「・・・・・・貴様に何がわかる」

声のトーンが変わった我愛羅に、カブトは肩をすくめた。

「気を悪くしたのなら謝るよ。君とやりあいに来た訳じゃないんだ。つくづく僕は言葉を選ぶのが下手だな」

「我愛羅!何やってんじゃん!?」

カンクロウとネジが廊下の角から姿を現した。

「・・・やれやれ。面倒臭くなって来たな」

フードを被り直してカブトが顔をしかめる。



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