第23章 大ハード
ズワと空を切り裂いて鮫肌が大蛇の口の端を捕らえたかに見えた。刹那、大蛇丸は鎌首をもたげて跳ね上がった。
「・・・・・・・!!!」
大蛇丸が牡蠣殻と、牡蠣殻の傍らに辿り着き、目を見開いている藻裾目掛けて飛びかかる。
「バカッ動け、汐田!!!!」
デイダラの声。
「・・・・磯辺?」
波平がかすれ声を漏らした。
空振りした鮫肌を床に着き、グッと持ち直して振り返った鬼鮫は、寝台に半身起こした牡蠣殻を目にした
牡蠣殻が鬼鮫を見ている。薄く霞がかった黒目が膨らんだ扁桃型の目。
口が動く。声は聞こえない。
ごめんなさい
鬼鮫は床を蹴って手を伸ばした。
牡蠣殻が寝台の上で危なげに立ち上がる。
温かい風がふうっと吹いた。
「磯辺ッ」
波平の逼迫した声が聞こえた。藻裾が両手で牡蠣殻を捕まえようとする。
「何で!?牡蠣殻さ・・・・・ッ」
牡蠣殻が大蛇に呑まれた。
藻裾の、そして、鬼鮫の手が空を掻く。
「何でだよ、牡蠣殻さん!」
藻裾の声がいやに響く。鬼鮫は空の手を見下ろして、毛筋一つ顔色を変えない。
消えた。
ー大蛇丸も、牡蠣殻も。