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連れ立って歩く 其のニ 砂編 ー干柿鬼鮫ー

第23章 大ハード


いつもの調子で毒づく藻裾を横目で見て、デイダラは肩の荷が下りたような心地になった。

よりによってこんなヤツに目の前で泣かれた日にゃこっちが泣きたくなるわ、うん。

デイダラは前方へ目を戻し、僅かに顔をしかめた。

・・・・・深水が死んだか・・・・

更に牡蠣殻は重傷、藻裾の様子を見る限り決して楽観出来る状況にはないようだ。

そして杏可也。

・・・このチビ、杏可也が連れていかれたとは言わなかったな。

デイダラは不快な苦味が胸の内に広がるのを感じた。

行っちまったって言った。杏可也ァ深水を殺したヤツに自分からついてったのか?腹の赤んぼごと?嘘だろ?うん?
杏可也ァそんな女じゃねえだろ?

全てにおいて嫋やかで円い優しい風情が脳裏を過る。

あんな観音様みたような綺麗な女が、そんな真似する訳ねえ。

暁のメンバーが聞いたら噴飯間違いないだろうが、まだ幼いと言っていい程女の性に初心なデイダラは本気だ。

「一体何があったんだ?うん?鬼鮫や風影がいて何でこんな事になる?」

思わず口をついて出たデイダラの言葉に藻裾が顔を歪めた。

「叔父貴だよ」

「うん?」

「先生と牡蠣殻さんをやったのも、杏可也さんが行っちまったのも、皆アタシの叔父貴のせいだ」

「身内?お前の?」

「許さねえ。今までも大概ムカついちゃいたが、今度という今度は許さねえ」

大きな目を吊り上げて藻裾は怒りを顕にした。

「これで牡蠣殻さんに何かあったら、アイツが今生で最期に見るのァアタシって事になるな。ぶっ殺してやる」

歯を食いしばっていつも以上の小声で囁く藻裾に、デイダラは息を吐いた。

「バカ、今それどこじゃねえだろ?牡蠣殻ァ何処だ?」

「あ、ヤベ、通り過ぎた!バッカ野郎、オメエが話しかけるから!今それどこじゃねえんですよ!」

藻裾がたたらを踏んで、デイダラも慌てて足を止める。

「・・・・ッ!オメエが言うな、オメエが!腹ッ立つな!」

「うるせえ!ホントにそれどこじゃ・・・・」

きびすを返して怒鳴りかけた藻裾の鼻先を吹き飛ばされたドアが唸りを上げて掠めていった。

その風圧に混じった細かな砂礫が二人を打つ。

「くッ!やっぱり下から来たな!」

「土遁か?」

「ンなモン使わねえでも砂に潜って奇襲をかけるくれェ屁でもねえぞ?磯の物知らずが」
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